第一章へ Vol.1
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靴みがき 仕上げの香りは Pの糞パテ
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紀行詩写真集
無情な選択
蜂がいたんだ 二匹の蜂が
飛びながらもみ合いになって
池の上に落ちた
二匹はまだ争っていた
そのうちのひとつが動かなくなった
やがてもうひとつも動かなくなった

お山の大将

足がつまづき絡んだ根が行く手をふさぐ
山は木の住み家だ
多くの従僕を従えて
それとも家族か
筋骨隆々とした幹
枝か幹かもう区別はできない
そうかあんたがお山の大将か
そいつは異端にも堂々としていた

初スイカ
境界線まで
食べ尽す
贈答の
メロンほおばる
網目まで
クワガタの
メスと思いきや
宵に舞うゴキ



玉蟲色の恋
さまよう帰り道
どろどろとした空気が肌にまとわりつく
空は灰色、影はない
体温と同じ霧がまとわりつく
森が息をしている
匂いたつ木々の香りが鼻の奥に漂う
青く薄暗いアスファルトの道をヘタヘタとゆく
今日は蝉の死骸に会えそうな気がする
昼下がりの夏の雑木林
ジージーと蝉が工事中の恋の音
ジトジトと額に汗
ひかり輝く木々の隙間に
ムラサキ色の
あれは蝶々だったか
ブンブンと空高く舞いやがて姿を消した
甘酸っぱい香りにつつまれて

げんごろう

電灯に魅せられた黒い虫
カブトムシかと目をやる
はたと思いきやゴキブリか
硬い甲羅に大きな水かきの付いた足
こんなところにまだいたのか
暑さ半ば過ぎ濁ったプールにいたあいつ
飛んだり泳いだり歩いたり
そうゆうヤツだったなお前は
濃青雲に
ギョロリ目を出す
満月か
我、愛すべき生き物たち

時にわずらわしく
時に憎らしく
されど心を和ませてくれる
豊かな恩恵を与えてくれる

食べられるものもある
癒されるものもある
どうせ人の手に収まった生き物たち

そして創られたものも

彼らにとってありのまま姿は
自由はいったい
どこにあるのだろ

大きな岩を動かしてみな

大きな岩を動かしてみな
大きな岩は重くてなかなか動かない
大きな岩は頑固だからちょっとやそっとでは動かない
水は器用だよ上手だよ
重力をちょっと感じるだけで
すぐに仲間と一緒になって海まで旅をする
それならたくさんの雨を降らせて
たくさんの水の力を借りて
せいのでゴロゴロと
大きな岩も連れて行ってあげるよ


既知なる旅は旅ではない

旅に出る
人に出会う
良い出会いもあれば悪い出会いもある
良い人が憎らしくなるときも
不愉快な人が必要となるときも
山の天気は一様でなく
海はいつも穏やかでない
雨を望むか
それとも雪か
夏に行くかそれとも冬か
旅に出たらすべてがある


空の色が溶け込んだ深く青い小さな入り江
風が水面を逆なでキラキラ輝く
大きな魚の背びれで一筆に遡った
今度は無数の小魚がさっと方向を変え
ダンスをしたかと思うと一斉に河口を遡った
そのさざなみのキラメキと造形はふたつとして
同じものはなかった

小さな入り江、冬のある晴れた日

大家族の引越し

黒山蟻の大群がゆく
右往左往しながらひとかたまりになって
粒粒の無数の黒い塊が大地を練り歩く
せわしなく辺りのバッタを蹴散らして
黒大蟻に体当りして
黒山蟻の大群がゆく

黒い塊は小さな穴の前でゴマ団子のように集まって
次から次へと穴の中へ入っていった
やがて穴の中から白い団子を歯にくわえて
次々の今来た道を戻って運んでゆく
一列になって大事に抱えて運んでゆく

新しい家が出来た
次の世代の子供たちを連れに
新しい家を行ったり来たり

そしたら引越しのお祝いだ
数匹の若い衆がミミズを運んで
宴の準備だ
チリチリ、がやがや
ちくちく、ワイワイ


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